「メェー。」あるところに1人の羊飼いと100匹の羊がいました。昼間のあいだは羊たちは野原で草を食べ、夜になると羊飼いに呼ばれて柵の中にもどります。羊飼いは100匹数えます。「1,2,3,4,5,・・・100匹」「おー、みんなちゃんと帰って来たねー」とみんなで安心して眠るのでした。柵の中にいれば、狼に襲われる心配はありせん、羊飼いが見張っているからです。
ある日一匹の羊が羊飼いや他の羊たちから離れていきました。「羊飼いについていかなくても、僕だけで探せば、きっともっといい野原を見つけることができる。多分、あの川を超えて山を登れば、その上には美味しい草が青々と生えている野原があるんだ。よし、今日は一人で行ってみよう。」
そうして羊は川を渡り、山を登り、思った通り素晴らしい野原を見つけ、そこで一日中美味しい草を食べ、昼寝をし、時間を過ごしました。
しかし日が傾いたとき「そろそろ帰るか」と思って山を降り始めたところ、沢山の分かれ道があって分からず、行ったり来たりしている間に、迷ってしまいました。「どうしよう」そして気づけば崖に落ちて、足を怪我して動けなくなってしまいました。あたりは日が沈んで暗くなり、遠くでは狼の遠吠えが聞こえます「ウオーーー」。
「あぁ、どうしよう。勝手に羊飼いから離れていったから、こんなことになってしまった。帰りたい。でも道が分からない。羊飼いに会いたい。でも羊飼いにはあと99匹も羊がいるから、1匹だけいなくなっても気にしないだろう。99匹もいるんだから、探しになんてこないだろう。」そうすると泣けてきたのでした。「あぁ、ごめんなさい。助けて」
その頃、羊飼いは、羊たちを柵の中に迎えつつ、数え始めました。「1,2,3,4,5,・・・97,98,99...。あっ足りない。もう一度「1,2,3,4,5,97,98,99」足りない! 「あ、朝、川の方へいったあの羊だ。探しに行かないと。」近所の人は言います。「あの一匹が悪い。言うことを聞かずに自分から出ていったんだ。行かなくていい。それに99匹もいるんだから、1匹くらいいいじゃないか。狼に食わせておけ」。しかし羊飼いは「いや、今頃助けてと叫んでいるはす。絶対見つける。」そして真っ暗の中、ランプを持って羊飼いは探しにいきました。「待ってろよ、今行くぞ。」暗い川を渡り、足跡を辿り、糞を見つけ、山を登り、野原につき、山を下り、行ったり来たりしました。「どこだ、どこにいる、待ってろよ、今行くぞ。」
そうして一晩中歩き回ったあと、微かに何か聞こえた気がしました。「メェー、助けて」。羊飼いは辺りを必死で探しました。そして、いました。崖の下で動けなくなってうずくまっています。羊飼いは降りていって羊をギューっとっと強く、抱きしめました。「よかった、見つかってよかった」と喜びました。そして歩けなくなった羊を大切に胸に抱いて、99匹の待つ家へと帰っていったのでした。
そして帰って、「ほっとけ」といった近所の人を連れて来てお祝いのパーティーをしました。「この羊は悪だったけど、それに気づいて助けを叫んでいた。でも私が行って、見つけて、一緒に帰ってこれた。嬉しい。だから一緒に祝っておくれ。歌っておくれ。神さまを賛美しておくれ。一緒に礼拝しよう。一匹の羊が私のもとに帰ってきた。私は、とっても嬉しい」と。
「生きていく中で、どれだけ私から離れていって、迷ってしまっても、「助けて」と祈るなら、待っていなさい、私は必ず行く。そして必ずあなたを見つけて、連れて帰って、喜ぶ。あなたは私の大切な一匹の羊のなんだから。」