2023年10月22日 聖霊降臨後第21主日(特定24)
ラッセ聖アポリナレス大聖堂モザイク, 6世紀,ラヴェンナ |
これは「政教分離」ではなく論敵を打ち負かす場面です。皇帝への納税は是か否か。賛成ならユダヤ人を怒らせ、反対なら反逆罪です。
イエスさまはまず「ローマの銀貨を見せよ」と言い、ファリサイ派がそれを持っているのを見て偽善を暴きます。「お前も納税しているじゃないか!」そして銀貨に皇帝の肖像と「神の子」という銘が彫られていることから偶像崇拝を糾弾します。「この汚らわしい偶像を返せ」と。納税はするが、偶像崇拝はしない、と。
そして深い言葉。「神のものは神に返せ。」私たちは神さまの銀貨です。愛そのものである神さまの姿が刻まれているのです。ローマの銀貨は不平と共に、皇帝へ集められます。神さまの銀貨は本来、喜びと共に神さまへと集められるものです。聖餐式の奉献ではこう祈ります。「すべてのものは主の賜物、わたしたちは主から受けて主に献げたのです。」お金も命も、健康も家族も、自分自身もすべて、本来は神さまのものなのです。
自ら決めて自分を神さまにお返しする生き方。それはとても幸せなものだと思います。愛された愛を神さまにお返しして人を愛する。み言葉の恵みをお返しして、人に愛を語る。育てられた恵みを神にお返しして親を介護する。祈られている恵みをお返しして、神さまに祈る。お返しすればするほど、その人のうちに神さまの似姿が現れます。
もちろん簡単ではありませんが、この幸せをイエスさまが成就して下さいます。
イエスさまは最も人間らしい人間、最も幸せな人として、父にお返しする生き方を尽くされました。死の時にも「私の霊をあなたに委ねます」と自分をお返しし、復活後には、新しい命を委ねて「平和をあなた方に与える」人になりました。このお方の内に、最も人間らしい人間になりましょう。