「イエスがエルサレムで遂げようとしておられる出エジプト」 ルカ福音書第9章31節
2023年8月6日 主イエス変容の日
The Exodus. Horace William Petherick (1839–1919). Museum of Croydon. UK. |
「主の変容」でイエスさまは、モーセとご自分の最期、つまり死について語り合っているときに光り輝きました。この「最期」のギリシャ語は「出エジプト」であり「脱出」です。つまりイエスさまは出エジプトの神として死んでいかれるのです。
神はあの過越の夜、海を割いてエジプトの支配下にあった民を脱出させ、そして支配者ファラオの軍勢は海で滅ぼされました。そして民を「奴隷の家」から自由な地へと導かれました。(出20:2)イエスさまは支配を滅ぼす神です。そして人間を苦しませるすべての支配を滅ぼして、人間を救う神です。
身近にはどんな「支配」があるでしょうか。ウクライナにとってのロシア、支配的な男性、上司、親族、信徒も司祭もいるでしょう。支配された人は、相手の都合の良い「奴隷」のように感じて苦しみます。
私を含め、支配欲は「自分の思い通りにしたい」と欲します。自分の人生を都合のようにしたい。だから周りの人、家族、隣人、教会の人間関係でさえ自分の理想どおりにしたい。皆が持っている欲です。
しかしイエスさまは支配を滅ぼす神です。エジプトの支配に苦しむモーセたちに降られたように、神は罪と死の支配に苦しむ私たちに降られました。人間イエスとなられました。そして私たちの代わりに支配を受けて死ぬことで、支配を滅ぼし、私たちを脱出させたのです。
家臣の命の代わりに自らの首を差し出す戦国大名のようです。
海は死の象徴です。イエスさまの十字架の海に、神は支配の軍勢を沈めて滅ぼし、私たちを洗礼の海を潜らせ、人生の荒れ野を聖餐のマナで養い、自由の地へと導かれます。愛は支配を滅ぼし、解放し、脱出させて自由にします。
支配からの自由の完成、それが復活であり、神の国です。
イエスさまが光り輝いたのは、新しい出エジプトである十字架の向こう側に輝く、神に支配される自由な命を見たからだと思います。
イエスさまは必ず悪い支配を海に沈め、私たちは洗礼の海を潜らせて自由にして下さる。洗礼の恵みを信じ、明るい希望をもって生きていきましょう。出エジプトの教会として。