「汚れた霊に対する権能」マタイ福音書10章1節
2023年 6月18日 聖霊降臨後第3主日 (A年特定6)
Julia Stankova ウラジミールの聖母子 |
イエスさまは十二使徒に悪霊に対する権能、つまり支配力を授けられました。この力は神さまの愛の支配が来た象徴です。世界の王であるイエスさまの愛の力です。「天の国は近づいたと宣べ伝え、病人を癒し、死者を生き返らせ、らい病を患っている人を清くし、悪霊を追い払え。」(10:8)
もちろん現実は悪に負けてしまいます。病気は癒されず、死は避けられず、差別は無くならず、悪に縛られたまま。権能を授けられた弟子たちでさえ悪霊を追い出せません。(17:19)
しかしだからこそ信じます。「それでも私たちには悪に対する神さまの力がある。神さまが悪に勝ってくださる」と。イエスさまは復活した。これが神さまの勝利の動かぬ証拠です。
悪に負けない。それは結果ではなくて過程です。病気が治らなくとも小さな健康を見出し、死が避けられずとも今の命を輝かせ、たとえ死んでも復活の再会を希望し、たとえ無くならなくとも差別と戦い続け、悪の束縛を断ち切り続ける。または人が悪に負けないように助け続けることです。
アナウンサーで、歌舞伎役者の妻だった小林麻央さんは、こう綴りました。「例えば、私が今死んだら、人はどう思うでしょうか。『まだ34歳の若さで、可哀想に。小さな子供を残して、可哀想に』でしょうか??私は、そんなふうには思われたくありません。なぜなら、病気になったことが私の人生を代表する出来事ではないからです。私の人生は、夢を叶え、時に苦しみもがき、愛する人に出会い、2人の宝物を授かり、家族に愛され、愛した、色どり豊かな人生だからです。だから、与えられた時間を、病気の色だけに支配されることは、やめました。なりたい自分になる。人生をより色どり豊かなものにするために。だって、人生は一度きりだから。」
悪に負けない。それは病気の色に支配されない、ということです。自分の人生はもっと色どり豊かなのです。
確かに病気そのものには、結果的には負けて。死ぬかもしれない。人の死と命は思うようにはできず、その結果は「み心のままに」と神さまに委ねて受け入れるしかありません。
しかしその過程は「夢と愛と宝物」を見つめて、楽しんで、感謝して、色どり豊かな人生にできます。病と死の「悪に負けない」ことはできるのです。それが「悪霊に対する権能」です。
悪に負けない。一人一人色どり豊かに愛する神さまの力を信じ、今を生きる喜びを感謝しましょう。結果は分からない。でも今、この朝は、自分たちのまま、ユーカリスト(感謝の聖餐式)を献げましょう。ちょうどイエスさまが、死ぬ結果は変えられなくとも、使徒たちと感謝することを選んだように。
「明日わたしは死ぬ。しかし今ここであなたと共に感謝する食卓は、死の色に支配されていない。あなたを愛した私の色どり豊かな人生だ。だから感謝しよう。どんな悪にも負けずに。」