愛の舌、祝福の唇、赦しの言葉

2023/05/10

祝福

 「舌を制して悪を言わず、唇を閉じて偽りを語らず」1ペトロ3:10

2023年5月14日復活節第6主日

Christ on the Cross by Bartolomé Esteban Murillo, 1660-1670. 

Timken Museum of Art.

 耳が痛い。私は元来、そして双極性障害を患ってからは特に、コミュニケーションが下手です。(牧師のくせに…)緊張と不安から、言わなくていい言葉や、言ってはいけない言葉まで口にしてしまいます。黙って笑っていればいいのに「舌を制して…唇を閉じて」いられません。

 この緊張と不安は「人に好かれたい」という虚しい欲から出ています。好かれたいから緊張し、嫌われたらどうしよう、と不安になります。そしてこの「自分大好き」な欲望を捨てない限り、どれだけ舌を制しようとしても、失敗するのです。

 初期のクリスチャンは、抑制だけではなく、積極的なコミュニケーションを勧めました。教会では「同情し合い、兄弟を愛し、憐れみ深く、謙虚になりなさい」(1ペトロ3:8)。相手に愛されるよりも先に、愛の言葉をかけなさい。または最低限、愛のない言葉をかけるな、と。

 そして信仰者を迫害する人々に対しても「侮辱をもって侮辱に報いてはなりません。かえって祝福を祈りなさい」(3:9)。自分を嫌う相手にさえ、祝福の言葉をかけなさい、と。

 これはイエスさまの教えと生き方です。(ルカ6:28)裏切る弟子たちにそれでも愛を語り、十字架につけられても敵への赦しの言葉を口にされました。

 しかしイエスさまも「真の人間」です。悪い言葉を言う衝動もあったのです。しかしそれでも心を父に委ね、一つ一つの悪い言葉の衝動を、愛と祝福の言葉に昇華していかれました。 

 だからイエスさまの内に神さまに結ばれた人間は、その衝動さえ神に受け取られ、昇華され、変えられ、用いられます。私のような「自分大好き」な人間をも、相手に祝福の言葉をかける人間に変えて用いてくださる。そう信じて、自分の舌と唇を用いたいと願います。


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聖公会京都教区の司祭です。大津聖マリア教会勤務です。うつ当事者として自助グループ「マ・カタリーナ」の世話人もしています。リンクをご覧ください。

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