敵は誰か

2023/02/15

祈り 十字架 神の愛

 「敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい」マタイ福音書544節 

(2023年は読まれない顕現節第7主日の聖書日課です)

磔刑
ヤン・ヘンリク・デ・ローゼン作.  アルメニア大聖堂、リビウ

 

 私は司祭だ、と言うのが恥ずかしくなるくらい、私には愛することのできない敵がいます。それも「そんな小さなことで」というようなことが原因です。


 どれだけイエスさまに命じられても、その人を思えば愛や祈りどころか、悪口や恨みしか出てきません。どれだけ頭で愛を唱えても、心はついてきません。そんなとき、イエスさまは厳しい裁判官に思えてきます。


 しかしイエスさまは、理想主義的で実行不可能な道徳を教えられたのではありません。ご自分の生きる道を示されたのです。不可能な愛を、まず自分が実行する決意です。人間という敵を愛する神の道です。


 イエスさまは暴力と憎しみを、非暴力と愛で受け止められました。兵士が右頬を打てば左頬を差し出し、下着を取れば上着を与え、十字架を担いで道を行き、自分を迫害する者のために祈られました。(ルカ23:34)そして命を奪う人間に惜しみなく自らの命を与えたのです。


 私たちは、敵を愛する以前に、神さまの敵です。神さまに愛された敵です。イエスさまのうちに神さまは、人間の悪に復讐せず、それを受け取ったままにされました。そしてご自分が傷つくことで、私たちを悪の応酬と罪の束縛から解放されました。


 この愛によってイエスさまは「天の父のような完全な者」となりました。(5:49)そして復活して私たちをも完全な者に変えていかれます。それは悪の応酬から解放され、敵を愛し敵のために祈る、全く新しい次元の生き方、愛の人生です。


 「あなたが敵でも、わたしはあなたを愛している。祈っている。」イエスさまの声を信じて、ついていきたいと思います。



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聖公会京都教区の司祭です。大津聖マリア教会勤務です。うつ当事者として自助グループ「マ・カタリーナ」の世話人もしています。リンクをご覧ください。

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