わたしのしるしになれ 「天を仰いで深く息をつき」 (マルコ7:34)

2021/09/01


「奇跡なんて起きない。私の障害は残ったまま。だから聖書の神なんて嘘だ。信じない。」そう暗くなる日が私にもある。

 

 イエスさまはまず一対一で見つめ、直接の関係を持たれる。そして指を耳に入れ、唾をした手で舌に触れられた。コロナ禍では考えられないくらい密な関係だ。創造主が自ら土をこねて私たちを造られた親密さだ(2:7)。そして天を仰いで呻き、深い息をついて祈られる。それは聖霊が人間の奥底で「言葉に表せない呻き」をもって執りなすようにだ(ロマ8:23-)。主は「癒されてほしい」と祈られる。そして呪文ではなく、ごく普通の「開け」という言葉をかけられた。「エッファタ」。そうだ、その発音のままの音をだ。

 

 すると耳が開き舌のもつれが解かれた。喋れるどれだけうれしかったか。彼は沈黙から一転、神を賛美し始めた。それまでの疑いも不信仰もすべてが晴れた。十字架がまだであるイエスさまから止められても、溢れるように賛美した。復活後きっと彼らは、この癒しとイエスさまの復活を同じ神の支配の現れだと確信し、ますます賛美しただろう。「極めて良かった」(1:31)と宣言された創造主を真似て「すべて、すばらしい」と(37)

 

 奇跡の目的は個人の利益だけではない。神の新しい支配のしるしとなることだ。主の復活も、私たちの信仰による新しい命も、しるしだ。

 

 偉大な奇跡として復活された主が呼びかける。「癒されてほしい。癒されるようにわたしは祈る。働く。だからあなたはわたしのしるしになりなさい。ほら、わたしの赦しと新しい命によって、あなたはもうすでに癒されはじめたじゃないか。」



「耳が聞こえず舌が回らない人の癒し」ジュリア・スタンコバ,2010

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聖公会京都教区の司祭です。大津聖マリア教会勤務です。うつ当事者として自助グループ「マ・カタリーナ」の世話人もしています。リンクをご覧ください。

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