敵意の闇さえ --「私たちはその方の星が昇るのを見た」マタイ2.2 (降誕日前夜キャンドルライトサービス)

2017/12/24


 今夜、神さまは暗闇とともし火を用いて伝える。人間の闇と神の光を伝えます。
 人が生まれると星が一つ昇り、死ぬと一つ消える。800年前の聖書の言葉を信じ、人間を闇から救い、生きる意味を与る神の子を探し求めて夜の闇を見つめ続けていた。
 そしてある夜ベツレヘムの頭上に強く輝く星を見た。「これこそ人の闇を救う方が生まれたしるし」そう信じて旅に出た。しかし迎えたのは邪悪なヘロデ大王。北朝鮮の王の様に権力を保とうと親族を暗殺し、生まれる子を怖がって街の2歳以下を皆殺しにした。3節で「ヘロデ大王は不安を抱いた。」人を傷つける人は自分の中に癒されない不安の闇がある。占い師は王の敵意の暗闇に追われつつ救いの星に従い続けた。
 しかも星占い師は民から迷信深いと馬鹿にされていた。バカにされ命を狙われても探し求め、赤ちゃんイエスを大切に抱く若い夫婦を見つけた。「これ以上に大切なものはない」その愛情が闇を照らす星の源。そして「喜びに溢れた。」800年分の喜び。
 命が狙われずとも、私たちは敵意の闇に襲われる。強い者が弱い者を食い物にする敵意。現代ではハラスメントという。人の敵意に攻撃されていることもあれば、自分の内に巣食う敵意によって自分が人を攻撃している時もある。また自分の命に迫る死を感じて、死が敵意を持って襲いかかるように思う時もある。死の敵意です。
 しかしクリスマスの神は、敵意の闇の中の人に、ベツレヘムの星のように輝く。イエスさまはその後、人間の敵意の闇をご自分の内に受け取った。そして十字架の闇でその敵意に殺されることで、敵意の暗闇を滅ぼした。自分の命の内に滅ぼした。そして復活し新しい人間、どんな敵意にも傷つけられない人間の平和の灯火となられた。
 闇が深いからこそ光は輝いて見える。人間の闇は決して無駄ではない。確かに人を傷つける闇を謝罪もなく赦してはいけない。しかし全ての闇は神の光によって照らされる。闇が深ければ深いほど、小さな小さな灯火、遠い遠い神の星の光が、まばゆい神の瞬きとして見える。神は人間の闇の体験をも、無意味に終わらせない。「あなたは、あの闇を体験したからこそ、わたしの光を、わたしの星を見ることができた。今まで生きてきた中で 無駄に暗闇に消えていったことなんて何一つない 。全ての暗闇は、あなたが探し求めて来たわたしの光をしっかり見るための必要な道筋だったのだよ」
 今夜私たちは闇に輝くイエスさまの光を見た。礼拝が終わり蝋燭が消え、いつもの闇に帰るとも、どれだけ敵意の暗闇に覆われ、自分の闇に躓いても、今夜の光を思い返そう。イエスさまの光は闇が深ければ深いほどより輝くのだから。

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聖公会京都教区の司祭です。大津聖マリア教会勤務です。うつ当事者として自助グループ「マ・カタリーナ」の世話人もしています。リンクをご覧ください。

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