「心の貧しい人々は幸いである」マタイ5:3 (A年顕現後第四主日)

2017/01/29

 「ちっとも幸せじゃない。この聖句嫌い。」精神障がいの仲間は言いました。「心を病んだからこそ得たものもあるでしょ、って他人に言われたくない。現実は辛くて悲しくて損ばかりだから。」本当にイエスさまは理屈こねて「幸い」を苦しむ人に押し付けたのでしょうか。
 「心の貧しい」という翻訳が災いして、ここを精神障がい者へのメッセージのみとして聞く癖がついてしまいました。しかし元の意味は「霊においては自分に頼らず、乞食のように神に乞い願うしかない人々」です。精神障がい者でも神に乞い願わない人はいるし、健常者でも神に乞い願う人はいます。「霊」とは個人の精神状態ではなく、神と人の関係です。
 主イエスは苦しみに理屈をこねず、ただ涙を流して連帯し、その責任を自分の十字架に背負われます。そして宣言します。「苦しむ人々よ、喜べ、祝福されよ。わたしが実現する天の国は豊かで幸せな人のものじゃない。苦しみから神に乞い願うしかない人々のものだ。」
 イエスさまは自らの生と死で天の国を実現しました。そして復活後の今は、弟子の私たちに勧めておられます。「神の貧しさの共同体、わたしの貧しい体となり、神に乞い願う天の国を地上で実現しよう。わたしは必ず現れる。十字架の苦しみで勝ち得た祝福を携えて、ちっとも幸せじゃない現実の中に必ず現れる。」

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聖公会京都教区の司祭です。大津聖マリア教会勤務です。うつ当事者として自助グループ「マ・カタリーナ」の世話人もしています。リンクをご覧ください。

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