渡らねばならない川は誰にもあります。大人になる、夫婦や親になる、人を赦す、地上から天へ、戻れない川を渡らねばなりません。
ヤコブにとってそれは「ヤボク川」を南に渡ることでした。弟ヤコブは兄エサウから長男の祝福を奪い、怒った兄に殺されかけて北の地ハランへ逃げていました。そして20年後、「故郷へ帰れ」との神の言葉で南下したのですが、ただ兄の殺意が怖い。しかし兄に赦してもらわなければ、生きて帰郷は果たせない。
恐怖で自分だけ川を渡れ切れないでいた孤独な夜、神が人の姿でヤコブに襲い掛かります。ヤコブは世明けまで格闘し、苦闘し、死闘を続けます。そしてヤコブは「祝福して頂くまで離さない」とこの方に必死にしがみつき祝福を受けます。それは「イスラエル(神と戦う)」という新しい名でした。また、顔と顔を合わせて神を見ても死ななかったその地を「ペヌエル(顔)」と名付けました。そうして川を渡ったヤコブは、恐怖を越えてエサウと顔を合わせ、赦されて、共に泣いたのです。
渡らねばならない川を前に、神は私たちと格闘して下さいます。その中で私たちの祝福への意志は堅くされ、新しい命へ入ります。神が共に格闘して、復活の命に入れて下さる。