ジェームス・ティソ「海になだれ込む豚」 |
鎖は引きちぎり足枷は砕いてしまい、もはや誰も彼を縛っておくことはできなかった。
マルコ福音書5:4
はじめて精神病院の「閉鎖病棟」を見た衝撃は忘れられません。看護婦の腰では鍵束がジャラジャラと鳴り、興奮状態の患者を拘束するベルト、そして外側から監視する窓、、、。
牢獄、と思いましたが、看護婦さんはこう説明しました。「鍵も拘束も監視も、患者さんの命をまもるためなんです」と。
周りには恐怖でも、一番苦しんでいるのは患者本人なのです。自分ではもう制御できない、「悪霊」としかよべないような心によって傷ついているのです。自殺は本人が内から「生きてみよう」と思わない限り、どれだけ外から縛っても完全には防げません。
周りの社会は汚れた犯罪者のように見捨てた悪霊男ですが、イエスはこの人自身の苦しみに寄り添い、悪霊を縛り上げ、本来の自分自身を取り戻させます。恐怖ではなく、憐れみの心で救い出すのです。悪霊が乗り移る犠牲の豚のようになっても、十字架で悪霊を自分の身に引き受けてでも、人を救うのです。
「悪霊よ、わたしの愛するこの人をもう苦しめるな、出て行け。」あなたが苦しむ時、あなたの主は、悪霊を追放する内なる力となる。